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2024.01.01 (最終更新日:2024.01.15) コラム記事

高齢者の方がサルコペニアになりやすい理由と予防策

「サルコペニア」は、加齢に伴って誰にでも一般的に見られる筋肉の減少を指す言葉です。サルコペニアが進行すると、日常生活において疲れやすさ・転びやすさなどを感じ、ご自身らしく楽しく生活するのに支障が出る可能性があります。なるべくなら、健康で楽しく過ごせる期間を長くしたいですよね。ここでは、高齢者がサルコペニアになりやすい理由とその予防策について説明します。

高齢者がサルコペニアになりやすい理由

高齢になるにつれ、サルコペニアが進行しやすい理由は大きく4つです。

①ホルモンの変化

加齢によって、成長ホルモンやテストステロンなどのホルモンの分泌が減少します。これらのホルモンは筋肉の成長と維持に重要です。

20代、30代など若い頃は、デスクワーク中心でほとんど運動をしない方でも、大怪我で寝たきり生活にでもならない限り、それほど筋肉量は減りません。
なぜなら、成長ホルモン(IGF-1)やテストステロン(男性ホルモン)がしっかり分泌されているからです。

成長ホルモンは、身長を伸ばすホルモンというイメージを持たれているかもしれませんが、それだけではありません。筋肉を動かすことで筋肉から分泌される「マイオカイン」というの一種でもあり、さまざまな健康効果を有しています。筋肉の維持・増強や、脂肪の分解、毛髪や髪の毛の健康維持、脳神経の活性化など、多くのことに関わるらしいことがわかってきました。
成長ホルモンは、生涯を通じて分泌されるホルモンです。ただし、10代後半のピーク時と比べると、30〜40代では2分の1程度、60代では3分の1程度にまで分泌量が減少します。

テストステロンは、男性で分泌量が多いですが、女性の体内でもわずかに分泌されています。筋肉の繊維を太くしたり、糖尿病や肥満を予防したりといった働きをしていますが、20代のピーク以降はどんどん分泌量が減少します。加齢だけでなく、環境変化や人間関係など、ストレスも分泌量の減少に関与しているようです。

この2つのホルモンが減少することで、若い頃のように筋肉を維持・増強することが難しくなります。

②活動量が下がる

高齢になると、多くの人で運動量が減少します。運動不足は筋肉の衰えを早める一因です。

実際、高齢者が2週間全く足を動かさない生活を送ると、筋肉量が23%も減少することがわかっています。何らかの原因で寝たきりになると、あっという間に筋肉が落ち、歩けなくなってしまうのです。そして、元に戻すには3倍以上の時間と、大変な労力が必要になります。

とくに用事がなくても外出したり、庭作業をしたりと、体を動かすようにすることが大切です。

また、筋肉を使わなくては、成長ホルモンを含む「マイオカイン」が分泌されません。筋肉を使ってマイオカインを分泌させることで、筋肉の維持・成長や病気予防に繋がり、健康になる…という好循環を起こすことができますよ。

③栄養不足

高齢になると、多くの方では食が細くなり、若い頃と同じようなもの、同じような量を食べるのは難しくなります。それ自体は自然なことですが、筋肉が減らないようにするためには、食事に工夫が必要です。
その中でも、特にタンパク質の摂取不足が、サルコペニアに大きく関与します。タンパク質は筋肉の材料であり、筋肉量の維持に必須の栄養素です。
とくに、65歳以上の方は、食事全体のエネルギー量(カロリー)の15%以上はタンパク質由来にするようにと、ほかの年代の方よりも高い目標が定められています。知らず知らずのうちに、タンパク質不足に陥っているかもしれません。

④病気の影響

高齢者は慢性的な疾患をお持ちの方が多いです。たとえば、腎臓病や糖尿病、心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、関節リウマチなどがサルコペニアに関連することがわかってきました。
これらの疾患により、常に体内では炎症が起こっており、筋肉を作り出す作用よりも、分解する作用の方が多くなってしまっています。そのため、筋肉量が落ち、出せる筋力も低下してしまうのです。

疾患によるサルコペニアの進行を少しでも抑えるため、通院を継続して必要な薬をきちんと服用すること、生活習慣を正すことを意識してください。

サルコペニアの予防策

少しでもサルコペニアの進行を遅らせるために、日々の生活で取り組める予防策をいくつかご紹介します。何か、1つでも始めてみてください。

適度な運動をする

筋肉は、使うことでその量を維持できます。病気などで医師から運動を止められている方以外は、日常生活に運動を取り入れましょう。
運動といっても、スポーツジムに通う、ダンベルを使ったトレーニングをするなど、大袈裟なことは必要ありません。まずは、ウォーキングや自宅でできる筋力トレーニングを始めましょう。

ウォーキングは、1日8,000歩が目安です。ほとんど自宅にいて動いていないという方は、まずは今より2,000歩多く歩いてみてください。目標を達成できない日があってもかまいません。1週間の中で平均して、1日8,000歩に近づいていればよいのです。
どのくらい歩いたのか、努力が数値で見えるとやる気につながります。数千円程度で歩数計が購入できますので、購入してみてください。

次に、自宅でできる簡単な筋力トレーニングを2つご紹介します。 1日1種目、週に1回でもやってみましょう。

<①スクワット>
太ももやお尻の筋肉を鍛えるトレーニングです。
・イスの背もたれをつかみ、まっすぐに立ちます。足は肩幅に広げます。
・3秒かけてゆっくりと、腰を落とします。このとき、膝がつま先よりも前に出ないよう意識してください。
・腰を落とした姿勢で1秒キープし、また3秒かけて元の姿勢に戻ります。
【10回繰り返す】
※体力に自信のある方はイスの背もたれを掴まず、腕を胸の前で組んでおこないましょう。

<②もも上げ>
腰からお腹にかけての筋肉を鍛えるトレーニングです。
・足を軽くひらき、背筋を伸ばして立ちます。手は腰に当てます。
・片足ずつ、3秒かけて太ももを上げます。太ももが床と平行になるくらいまで上げてみましょう。このとき、バランスがうまく取れない方は、壁やイスの背もたれに軽く手をついてください。
・ももを上げて1秒キープし、また3秒かけて元の姿勢に戻ります。
【左右10回ずつ繰り返す】

<③クッション背中起こし>
腹筋運動を、軽い負荷でおこなえるよう工夫したトレーニングです。腹筋運動が苦なくできる方は、通常の腹筋運動で問題ありません。
・床に仰向けになり、肩から背中にかけての部分に枕やクッションを入れます。
・両足は肩幅程度に開いて膝を立て、腕は胸の位置でクロスさせます。
・息を吐きながら、ゆっくりと背中を起こします。起こせる位置まででかまいません。
・ゆっくりと元の姿勢に戻ります。勢いで戻らないことが大切です。
【はじめは5回、慣れてきたら10〜20回繰り返す】
慣れてきたら、クッションを外して挑戦しましょう。

栄養バランスを考慮した食事を摂る

タンパク質を意識しつつも、栄養バランスのよい食事をとることが大切です。コツを2つお伝えします。

まず、1日3回の食事に、必ずタンパク質のおかずを食べるようにしましょう。「朝ごはんは白米と味噌汁だけ」という方は、ウインナーやゆで卵など、簡単に食べられるタンパク質を取り入れてみてください。

次に、1回の食事でたくさん食べられない場合は、おやつでタンパク質を補充しましょう。ヨーグルトやチーズ、プリンなどがおすすめです。

いずれの場合でも、糖尿病や腎臓病などで医師から食事について指示を受けている場合は、医師の指示を優先してください。

まとめ

サルコペニアは、加齢に伴う筋肉の減少、つまり「筋肉の老化現象」です。誰にでも生じる自然なことですが、少しでも進行を遅らせ、長く元気に過ごせるように取り組みを始めましょう。
予防としては、運動と食事の2つが大切です。ここでご紹介した内容について、日々の生活で取り組んでみてください。早いうちから取り組みを始めることで、サルコペニアの進行を遅らせることができますよ。

参考
・久野 譜也. 100歳まで動ける体になる「筋リハ」
・日本人の食事摂取基準(2020 年版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
・杉本 研. サルコペニアにおける骨格筋ミトコンドリア機能とMyokineの意義. 第53回日本老年医学会学術集会記録