便秘が続くと心も不安定に?腸とメンタルの知られざる関係
- 健幸アンバサダー
- 2 日前
- 読了時間: 5分
「腸の不調」が「心の不調」につながる理由
「なんとなく気分が落ち込む」「イライラしやすい」「やる気が出ない」。そんな心の不調を、ただのストレスや性格のせいにしていませんか?実は、こうした精神状態の背後には、腸内環境の乱れが関係している可能性があることが、近年の研究で明らかになっています。中でも注目されているのが、便秘とうつ症状の関連です。

便秘とは、単に排便が滞るというだけの問題ではありません。腸内に老廃物が長時間とどまることで、有害物質が発生し、それが腸壁から吸収されて血流に乗って全身に巡ると考えられています。この状態が慢性炎症や自律神経の乱れを引き起こし、脳の働きにも影響を及ぼす可能性があるのです。
また、腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、膨大な神経細胞が集まる器官。感情や気分に深く関わる神経伝達物質の多くが、実はこの腸で合成されています。腸の不調が心のバランスを崩す、これは決して誇張ではなく、科学的に裏付けられた事実なのです。
セロトニンの約90%は腸でつくられている
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、気分の安定や安心感をもたらす神経伝達物質です。実はその約90〜95%が腸内(主に小腸)で生成されているということをご存知でしょうか?
もちろん、腸で作られるセロトニンは脳に直接届くわけではありませんが、セロトニンの材料となるトリプトファンの吸収や代謝に腸内環境が大きく関与しています。腸内フローラのバランスが整っていることで、脳内でも十分なセロトニンが生成されやすくなり、結果としてメンタルの安定にもつながると考えられているのです。
ところが、便秘が続くと腸内細菌のバランスが崩れ、トリプトファン代謝のプロセスがうまく機能しなくなります。これにより、セロトニンの合成が妨げられ、気分の落ち込みや不安感が慢性化するリスクが高まってしまうのです。
便秘とうつの相関関係を示す研究
イギリスで行われた大規模な疫学調査(Cheng et al., 2017)では、慢性的な便秘を抱える人の多くが、うつ症状や不安感を併発していることが報告されています。さらに、過敏性腸症候群(IBS)などの腸の機能性疾患を持つ人は、健常者に比べてうつや不安のリスクが2倍以上高くなるという研究結果もあります。

もちろん、便秘がすべてのうつの原因ではありません。しかし、腸と心の関係が互いに影響を及ぼし合っているのは明らかです。身体と心の両面からアプローチすることが、真の健康に近づくカギだと言えるでしょう。
今日からできる「腸と心を整える生活習慣」
腸内環境を整えることは、便秘解消だけでなく、メンタルの安定にもつながる“土台作り”です。以下に、今日から始められる実践的な5つのセルフケア習慣をご紹介します。
1. 毎朝の起床後にコップ1杯の水
寝起きに常温〜ぬるま湯の水を飲むことで、腸が刺激され、ぜん動運動が促進されます。腸を「目覚めさせる」簡単な習慣です。

2. 発酵食品+食物繊維を意識
ヨーグルト×バナナ、納豆×わかめなど、善玉菌とプレバイオティクス(善玉菌のエサ)を同時に摂る工夫を。腸内フローラが元気になります。
3. ストレスを感じたら5分間の腹式呼吸
深くゆっくり呼吸することで副交感神経が優位になり、腸の動きが整いやすくなります。1日数回でも効果的です。

4. 適度な運動で腸を“揺らす”
ウォーキングやストレッチなど、軽い運動でも腸の動きを物理的に刺激し、排便リズムを整えてくれます。
5. 就寝前のデジタルデトックス
寝る前のスマホやテレビは、脳と腸のリズムを乱す要因に。就寝1時間前からはデジタル機器をオフにし、心身のクールダウンを。

「腸からこころを整える」新しいセルフケアの形
腸の健康は、単なる“お腹の調子”だけでなく、心のコンディションそのものに影響を与える大切な土台です。便秘が続いているときは、単なる身体の不調と決めつけず、こころからのサインとしても受け止めてあげることが大切です。
腸と心はつながっています。だからこそ、腸を整えることは、こころの“土壌”を耕すことでもあるのです。ほんの少しの生活習慣の見直しから、「腸と心のセルフケア」をはじめてみませんか? それは、健やかで幸せな毎日、“健幸”な生き方への第一歩になるはずです。
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出典・参考文献
腸内細菌と精神神経疾患からみる腸脳相関 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/62/6/62_62.6_451/_pdf?utm_source=chatgpt.com
腸内細菌叢と育児ストレスとの関連 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-03-01?utm_source=chatgpt.com
大腸の不調と心の病の密な関係 https://www.asahi.com/relife/article/13552564?utm_source=chatgpt.com
Dimidi, E., et al. (2020). Mechanisms of action of probiotics and the gut–brain axis in depression: A review of the literature. Nutrients, 12(2), 350.
Gershon, M. D. (1998). The Second Brain. Harper Perennial.
Cheng, C., et al. (2017). Prevalence of psychological disorders in irritable bowel syndrome: A meta-analysis. World Journal of Gastroenterology, 23(8), 1447–1458.

塚尾 晶子
株式会社つくばウエルネスリサーチ 取締役副社長/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターアドバイザー/保健師
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了 博士(スポーツウエルネス学)/ 専門領域はスポーツウエルネス学、保健学、人間環境学、公衆衛生学。
旭化成株式会社での産業保健活動、日本看護協会での健康政策の厚生労働省委託事業推進や保健師現任教育、法政大学での兼任講師等を経て、現職。地方自治体、企業等のSmartWellnessCity(健康都市政策)推進のコンサルティング、人材育成、国の調査研究事業等に従事し、国や地方自 治体や大学、企業と連携して健康づくり無関心層を減少させ健康格差を和らげる政策に取り組む。