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​健幸情報

サルコペニア予防に役立つ運動の種類と方法

更新日:4月5日

筋肉の老化現象ともいえる「サルコペニア」をご存じでしょうか?サルコペニアを予防するためには、運動が必要不可欠です。「運動は健康によい」なんて、これまでの人生で耳にタコができるほど聞いているかもしれませんね。わかっていても、なかなか続けられなかった人が多いでしょう。ここでは、サルコペニアが健康にどのように影響するのか解説するとともに、ご自宅で気軽に続けられるような運動をいくつか紹介します。

筋肉が老化する影響とは?

少しずつ老化が進行するのは自然なこととはいえ、その程度が大きいと健康を損なう原因になります。筋肉が老化して生じる悪影響について、代表的なものをお伝えしますので、何か自覚するようなものがないか確認してみましょう。

体力の低下

筋肉量が減ると、階段の上り下りが辛くなる・重い荷物が持てなくなる・歩くのが遅くなるなど、直接的な影響が生じます。「体力が落ちてきたな」という風に実感することが多いでしょう。その結果、1人での外出がおっくうになって他人との交流が減ったり、気持ちの落ち込みが生じたりと、心身の健康を損なう一歩となってしまいます。

転倒・骨折のリスク増加

サルコペニアでは、姿勢を保つための筋肉(抗重力筋)から落ちていくため、転びやすくなり、骨折のリスクが上がります。加齢に伴って骨密度は自然と低下し、ちょっと転んだだけ・ちょっとぶつけただけでも骨折してしまうことが少なくありません。つまづいたり、よろけたりする回数が増えてきた方は、サルコペニア進行のサインといえます。

「骨折なんて、治れば健康には影響ないのでは?」とお思いになるかもしれませんが、じつはそうではないのです。とくに怖いのは大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折)で、1年後死亡率が80歳以上で20%、90歳以上では30%にものぼります。筋肉を維持して転ばないようにすることが、元気に長生きするために大切です。

認知症との関わりも

サルコペニアの方は、そうでない方と比べて、2倍も認知機能障害を呈する割合が高いことがわかっています。

さまざまな調査によると、認知症を発症する10年ほど前から少しずつ体重減少が始まり、発症の2〜3年前から体重減少のスピードが早くなるようです。また、認知症によって食欲や活動意欲が低下して、筋肉量が落ちるということもあります。認知症とサルコペニアは、お互いに関連し合っているものといえるでしょう。

筋肉を維持するようなトレーニングを取り入れることで、認知機能低下の予防や改善が期待できることもわかってきています。

「サルコペニア肥満」にも注意

これまでの説明で、「サルコペニアは痩せている人・虚弱な人に関係する言葉だ」という印象を受けたかもしれません。ですが、普通体型や少しふくよかな方でも、サルコペニアが生じている可能性はあります。

筋肉量が減っている一方で、体脂肪の量が増えている状態が「サルコペニア肥満」です。体脂肪が増えると、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)などの生活習慣病を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞などの大きな病気を起こすリスクが高まってしまいます。

痩せていない方でも、運動習慣がない・日頃あまり動いていないという方は、筋肉が減少している可能性が高いです。今より少しでも体を動かすように意識しましょう。

サルコペニア予防に運動を

筋肉量が減るだけで、体にとってさまざまな悪影響が起こるということを説明してきました。では、実際にどのような運動をしたらよいのでしょうか?

「何かスポーツをするのかな」「ジムに通わないといけないのかな」とイメージするかもしれませんが、あまり高い目標を立てる必要はありません。家で、道具も買わずにできるようなところから始めて、それが続けられれば十分素晴らしいです。週に3回の筋力トレーニングを最終目標としましょう。

若い方・体力に自信のある方向けの筋力トレーニング

若いうちからサルコペニア予防・体力作りのために筋力トレーニングを始めよう、という方は、少し強度の高いトレーニングをおすすめします。

<ハンドニー> 背骨を支える筋肉を鍛えるトレーニングです。やり方によって強度を変えられますので、無理のないレベルから始めてみましょう。 ①強度:弱・四つん這いの姿勢をとります。このとき、背中をまっすぐに伸ばします。 ・片腕を地面を平行になるように伸ばし、10秒キープします。 ②強度:中・四つん這いの姿勢をとります。このとき、背中をまっすぐに伸ばします。 ・片足を地面を平行になるように伸ばし、10秒キープします。 ③強度:強・四つん這いの姿勢をとります。このとき、背中をまっすぐに伸ばします。 ・片腕と、逆側の片足を地面を平行になるように伸ばし、10秒キープします。(右腕と左足、左手と右足の組み合わせ) 【左右交互に3回ずつ】を1〜3セットおこなえるとよいでしょう。 10秒キープするのが難しい場合は、3秒くらいから始めて、少しずつ時間をのばしていきます。

<プランク> お腹周りの筋肉を中心に、二の腕や背中など、全身を鍛えるトレーニングです。 ・うつ伏せの状態から、両ひじを曲げて床につけます。 ・手は軽くこぶしを握るようにし、足はつま先だけを床につけて腰を浮かせます。 このとき、お尻が高く上がったり、腰が反ったりせずに、頭から足先までまっすぐにすることを意識してください。 ・ゆっくりと呼吸をしながら、姿勢を数十秒間キープします。

50代以降から始める方・体力に自信のない方向けの筋肉トレーニング

運動習慣のないまま50代になったという方は、ご自身が思っているよりも、筋肉量が低下している可能性があります。無理してケガをしてはいけませんので、「少し物足りないかも」と思うくらいの運動から始めて、少しずつ回数や頻度を増やしていきましょう。 「もう少しできそうだ」という方は、上で紹介している「体力に自信のある方向けのトレーニング」をおこなってみてください。

<スクワット> 太ももの筋肉を鍛えるトレーニングです。いつまでも元気に自分の足で歩くために、下半身の筋肉を維持しましょう。 ・両足を肩幅に開いて立ちます。両腕は、まっすぐ前に、地面に平行になるように伸ばします。筋力に不安がある場合は、イスの背もたれを軽く掴んでください。 ・ゆっくりと3秒ほどかけて腰を落とします。このとき、膝がつま先よりも前に出ないように意識してください。 ・腰を落とした状態で1秒キープし、またゆっくりと3秒かけて元の姿勢に戻ります。 【10回繰り返す】

<もも上げ> 腰からお腹にかけての筋肉を鍛えるトレーニングです。 ・足を軽くひらき、背筋を伸ばして立ちます。手は腰に当てます。 ・片足ずつ、3秒かけて太ももを上げます。太ももが床と平行になるくらいまで上げてみましょう。このとき、バランスがうまく取れない方は、手で壁やイスの背もたれに軽く触れてください。 ・ももを上げて1秒キープし、また3秒かけて元の姿勢に戻ります。 【左右10回ずつ繰り返す】

<壁ドン腕立て> 胸周りや腕の筋肉を鍛えるトレーニングです。 ・両手を肩幅くらいに開き、肩の高さよりも少し下の位置で壁に手をつきます。腕を軽く伸ばしたときに、指先が壁に触れるくらいの位置に立ちましょう。 ・ゆっくり3秒ほどかけて、ひじを曲げます。このとき、体を一直線に保つことを意識します。 ・またゆっくり3秒ほどかけて、元の姿勢に戻ります。 【10回繰り返す】

まとめ

今回は、筋肉量が減少する「サルコペニア」が、健康にどのような影響を与えるのか、そして、予防のために自宅でできる運動についてご紹介しました。サルコペニアを予防して長く健康を維持するには、運動習慣をつけることが大切です。とはいえ、「運動」を難しく考える必要はありません。今回紹介したような簡単な運動を、日々の生活の中で少しずつ取り組んでみましょう。

参考

・厚生労働省.サルコペニアの人を対象にした運動プログラム https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/mhlw_research_01.pdf

・荒井秀典.骨粗鬆症の疫学とサルコペニア・フレイル.日本内科学会雑誌111巻4号. https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/4/111_724/_pdf

・杉本大貴他.サルコペニアと認知機能障害. Jpn J Rehabil Med 2021; 58: 633-638. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/6/58_58.633/_pdf

・久野譜也著.死ぬまで歩ける!7秒筋肉体操

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