生活習慣病予防に役立つ食生活と栄養素について
中高年の年代から気をつけたい「生活習慣病」ですが、その予防のためには食生活の見直しが大切です。好きなものを、気の向くままに好きなだけ食べる…ということを続けていては、健康を損なってしまうかもしれません。今回は、食生活でどのような点に気をつけるべきか、また、健康増進のために役立つ栄養素の知識をご紹介します。
生活習慣病と食事の関係性
生活習慣病は、運動や食生活、飲酒、喫煙、睡眠など、日々の生活習慣の積み重ねによって発症するものの総称です。具体的には、以下のようなものが生活習慣病と分類されます。
・高血圧 ・脂質異常症(高コレステロール血症) ・高尿酸血症 ・肺気腫、慢性気管支炎 ・糖尿病 ・歯周病
日本人の死因の上位を占める「心臓病、がん、脳卒中」なども、生活習慣病に含まれています。発症にはさまざまな要因が関与していますが、中でも「食事」は、誰でも毎日おこなうものでありながら、「適切な量」「最適なバランス」などについて、あまり学んだ経験もないのではないかと思います。
食生活の中で、気をつけたいポイントは3つです。
①食べすぎないこと まずは、食べすぎないということ、ご自身にとっての適正量を知ることが必要になります。摂取したエネルギー量(カロリー)を調べてみると、思いのほか食べすぎていたということが少なくありません。
食べすぎは肥満につながり、脂質異常症や高尿酸血症、高血圧などの原因でもあります。昔から「腹八分目で医者いらず」という言葉があるように、ある程度食事は節制する必要があるでしょう。
そうは言っても、エネルギー量の計算は難しいものです。自動で食べ物のカロリーを計算してくれるツールの活用をおすすめします。 「カロリーSlism」というサイトでは、食材や料理名で検索すると、おおよそのエネルギー量を知ることができます。たとえば「生姜焼き」のように検索をすると、「1人前(152g)357kcal」と表示されます。
「あすけん」というアプリは、一般的な家庭料理のほか、コンビニやファミリーレストランのメニューも登録されているため、外食の多い方におすすめです。摂取カロリーや栄養バランスを簡単に確認することができ、食生活の改善ポイントがわかりやすくなっています。
②バランスよく食べること 偏ったものばかりを食べずに、バランスよくさまざまな食材を取り入れることが大切です。「これさえ食べていれば病気にならない」などという魔法の食材はありませんし、「この食材は食べたら病気になる」というような避けるべき食材もありません。
すべての栄養素は、人の体にとってある程度は必要なものです。「◯◯制限ダイエット」のような手法が流行することもありますが、バランスよく食べることが健康の基本になります。
③塩分は控えめに 基本的に、日本人は塩分をとりすぎているため、若いうちから減塩を意識することが大切です。塩分のとりすぎは高血圧に繋がります。高血圧が続くと血管のダメージによって動脈硬化がすすみ、心臓病や腎臓病を引き起こしたり、脳卒中を起こしたりと別の病気に繋がってしまいます。
WHO(世界保健機構)では、1日の塩分量を6g未満にするように推奨していますが、日本人の平均摂取量は約10gです。醤油、みそ、漬物など、和食は塩分をよく使うので、日々の生活で少しずつ意識していく必要があります。 「ちょっと薄味かな」と思う程度の味付けに慣れていきましょう。
生活習慣病予防に取り入れたい栄養素
バランスよく食べることが大切だとお伝えしてきました。その中でも、悪者にされがちな栄養素や、外食続きだととり損ねてしまいがちな栄養素があります。 ここでは、そのような栄養素の中から3種類をご紹介します。必要な栄養素だということを知ると、食生活を変えようという意識づけができるかもしれません。
脂質は種類を変えてみて
「油のとりすぎはよくないだろうな」と思っている方は多いでしょう。ですが、脂質も必要な栄養素の1つです。闇雲に制限すればよいというものではありません。
油は大きく3種類に分けられます。
・飽和脂肪酸 室温で固形になっている脂質は飽和脂肪酸と呼ばれる種類です。肉や乳製品など、動物性の油に多く含まれます。重要なエネルギー源ではありますが、とりすぎるとコレステロール値の上昇や、心筋梗塞のリスク増加などを引き起こすことがあります。
・不飽和脂肪酸 オメガ3系(EPA、DHAなど)・オメガ6系(リノール酸、アラキドン酸など)・オメガ9系(オリーブオイル、菜種油など)に分けられます。体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。コレステロールのバランスを整える働きがあるため、意識的にとりたい脂質です。
・トランス脂肪酸 植物油を高温で処理して作る脂肪酸です。マーガリンやショートニングなどが該当し、近年では健康への悪影響が懸念されています。
どれも不要な油ではありませんが、バランスを考える必要があります。飽和脂肪酸は過剰に摂取しがちのため、不飽和脂肪酸に代替してみましょう。簡単な方法として、「肉ではなく、魚を食べる日を増やす」のがおすすめです。
食物繊維は毎食1品を意識
「食物繊維は体によいもの」ということは、みなさんご存じかと思います。ですが、あまり自炊をしない方であれば、食物繊維の摂取が少なくなっているのではないでしょうか?
食物繊維の役割として、血糖値の上昇を穏やかにしたり、便通をコントロールしたりといったものは、よく知られています。それに加え、食物繊維は過剰に摂取した「塩分・糖分・脂質」を体の外へ排出することで、生活習慣病の予防にも効果的です。
高血圧、便秘、肥満、糖尿病、脂質異常などの問題を抱えている方も、まだ健康だという方も、「毎食1品は食物繊維のおかずを食べる」を意識してみてください。
たとえば、コンビニでも外食でも、サラダや金平ごぼう、ひじきの煮物、ほうれん草のおひたしなどを追加しましょう。白米を麦飯や玄米に変更するのもよいですね。「朝はあまり時間がなくて…」という場合は、レトルトの味噌汁に乾燥わかめを入れたり、冷凍のブロッコリーやほうれん草を活用するのも手軽でよいのではないでしょうか。
炭水化物は適量をとる
炭水化物は、ダイエットを考えている方には悪者にされがちですが、量を極端に減らす必要はありません。
全体の摂取エネルギー量のうち、約50〜60%程度を炭水化物から摂取するのが、理想的なバランスと言われています。アメリカでおこなわれた調査によると、このバランスで炭水化物を接種している人は、最も平均寿命が長いのだそうです。
白米をお茶碗に軽く1杯(150g)でおよそ230kcalなので、毎食1杯ずつ食べる分には、摂取エネルギーの割合として全く問題ありません。丼ご飯や、パスタ・うどんといった一品料理を毎日のように食べているのであれば、少し炭水化物が多いといえるかもしれませんので、量を少なめにするなど調整してみてください。
炭水化物は「糖類」なので、血糖値に悪いというイメージをお持ちの方がいるでしょう。ですが、炭水化物の制限は、短期的(3か月)には血糖値の改善が見込める可能性があるものの、長期的には血糖コントロールを改善させないということがわかっています。
極端に食事の炭水化物を制限することはせず、お菓子や、糖分の多く含まれた飲料などを減らすように心がけましょう。
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まとめ
今回は、生活習慣病の予防のために意識したい食生活のポイントと、正しく知っておきたい栄養素の知識をご紹介しました。 食事は毎日のことですから、ほんの少しの意識でも続けることで効果が出てきます。生活習慣病を予防し、長く健康的に過ごすために、今回ご紹介したポイントを取り入れてみてください。勘違いされがちな栄養素の知識として、よい脂質を積極的にとること、食物繊維を毎食取り入れること、糖質を制限しすぎないことをご紹介しました。バランスよく、適切な量を楽しく食べるようにしましょう。
参考
・厚生労働省e-ヘルスネット:炭水化物/糖質 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
・厚生労働省e-ヘルスネット:不飽和脂肪酸 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html
・厚生労働省e-ヘルスネット:生活習慣病 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-040.html
・千葉県栄養士会.生活習慣病の予防と食事 https://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/preventive/seikatusyukan/
・厚生労働省. eJIM.オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/05.html
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