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​健幸情報

睡眠が健康寿命に与える影響と効果的な睡眠の方法

更新日:4月5日

健康上の問題がなく生活できる「健康寿命」の長さには、睡眠の質も影響しているとご存じでしょうか?日本人は、世界的にみて睡眠時間が短く、睡眠不足の方が多いです。「眠いな」「疲れが溜まっているな」と感じても、無理して仕事や家事をがんばったという経験のある方も多いでしょう。今回は、睡眠がなぜ健康寿命に影響するのかを解説し、よい睡眠をとるために有効な取り組みについてご紹介します。

睡眠と健康寿命との関わり

睡眠の質が低下すると、健康にどう影響するのでしょうか?

生活習慣病になりやすくなる

睡眠不足によって、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症など、さまざまな生活習慣病を発症するリスクが高くなります。最近では、睡眠障害も生活習慣病の1つとする流れもあるほど、密接な関係があるのです。

睡眠不足だと、食欲増進ホルモンである「グレリン」の分泌が増え、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減ります。そうすると、食欲のコントロールが難しくなり、肥満になるかもしれません。睡眠不足が続くとインスリンの効果も出にくくなり、2型糖尿病の発症リスクが倍になることもわかっています。また、睡眠不足が続くと、血圧や心拍数も上昇しやすいです。すると心臓への負担が高まり、高血圧や心不全などを発症する要因となります。

生活習慣病は、よくない生活習慣がいくつも絡み合って発症するものです。生活習慣病を発症すると、さらに合併症として心筋梗塞や脳梗塞などの大きな病気を発症しやすくなります。糖尿病の合併症では、透析になったり、手足の痺れで歩けなくなったりすることもあり、生活習慣病の発症は将来の健康寿命に大きく影響します。

睡眠だけ気をつけていても、100%の発症予防ができるわけではありませんが、要因の1つとして睡眠に気をつけてみてはいかがでしょうか。

精神的な不調を起こしやすくなる

睡眠不足が続いたとき、ちょっとしたことでイライラしたり、わけもなく泣きたくなったりと感情の波が大きくなった経験はありませんか?

睡眠には、気持ちを安定化させたり、ストレスに対抗する力を蓄えたりする役割があります。そのため、1日の睡眠不足でも精神面に影響が生じ、慢性化すると「うつ病」を引き起こすリスクが高くなるのです。睡眠障害とうつ病は、お互いに状態を悪化させあう因子なので、睡眠を大切にして精神面の不調を予防しましょう。

大切なのは睡眠の長さよりも「質」

睡眠が大切だと聞くと、「何時間寝ればいいのだろう」「8時間は寝なくてはだめだ」というように、睡眠の長さを気にしてしまう方が多いです。ですが、睡眠の長さよりも、「質」を重視しましょう。人それぞれ、必要な睡眠の長さは違いますので、一概に「6時間で大丈夫」「8時間は必要」などと断言することはできません。また、年齢によっても睡眠の長さは変わります。一般的に、年齢を重ねると長く眠ることができなくなりますが、それは自然なことです。朝の4時に目が覚めたとしても、スッキリと起きることができていれば問題ありません。睡眠の長さではなく、「気持ちよく起きることができた」「日中元気に活動できた」など、ご自身の感覚を大切にしましょう。

睡眠の質を向上させるには?

睡眠の質を高める方法は、いくつかわかっています。ご自身に足りないと感じるもの、改善の余地があると思うものを取り入れてみてください。

朝に日光を浴びる

睡眠の質を高めるためには、朝からの行動が大切です。まず朝起きたら、カーテンを開けたり、散歩に出かけたりして日光を浴びましょう。目から日光を取り入れることで、体の中では「セロトニン」の分泌がはじまります。セロトニンは、情緒を安定させる作用をもつ「幸せホルモン」です。セロトニンは、夜になると脳内で睡眠ホルモンの「メラトニン」に変化し、体を睡眠モードへいざなってくれます。

質のよい睡眠のための取り組みは、朝から始まるのです。

適度に体を動かす

体を動かして、適度な疲労を感じることも必要です。1日中全く動かずに過ごしていれば、疲れないので、眠くもなりません。寝る時間が遅くなり、朝は予定の時間にスッキリ起きられず、睡眠時間が短いので日中は眠くなる…という悪循環に陥ってしまいます。

激しい運動をする必要はありませんが、少し歩く距離をのばしたり、室内でできるストレッチや筋肉トレーニングをしたりと、体を動かすようにしましょう。

カフェイン・アルコールに注意

カフェインは、午後2時くらいまでの摂取にとどめましょう。それよりも遅い時間にカフェインをとると、目が冴えて睡眠の質が低下してしまいます。お茶にも、カフェインの含まれるものは多いです。気が付かないうちに、カフェインを夜遅くまでとっているかもしれません。

<カフェインの含まれる飲み物> コーヒー、紅茶、緑茶、烏龍茶、ほうじ茶、玄米茶、一部の炭酸飲料など

<カフェインの含まれない飲み物> 麦茶、そば茶、ルイボスティーなど

アルコールは、「飲むとぐっすり眠れる」と思っている方も多いですが、じつは睡眠には悪影響です。寝入りは早くなりますが、睡眠が浅くなり、途中で起きること(中途覚醒)が増えます。寝入りのよさは耐性ができやすく、アルコールの量を増やさなくては効果を感じられなくなります。アルコールは、時々楽しむ程度に控えるのがおすすめです。

入浴方法にも工夫を

入浴のタイミングや湯温を調整することも大切です。スムーズに入眠し、深く眠るためには、就寝の2〜3時間前に入浴をしましょう。睡眠の直前だと、寝入りがスムーズにいきにくくなります。湯温と入浴の長さについては、以下の3パターンのなかで好みのものを探してみてください。

・42度で5分 ・38度で25〜30分 ・40度で30分の半身浴(腰から下だけを湯に浸ける入浴法)

就寝前に体温を0.5度〜2度ほどあげることで、深い睡眠が得られやすいとされます。ただし、あまり体温を上げるのも体への負担となりますので、熱いお湯が好きな方は短めの入浴とするのがよいでしょう。

照明の色を変える

白っぽい蛍光灯の光は、体内時計を遅らせます。つまり、夜に白い光を浴びていると、眠くなりにくいということです。生活のリズムがどんどん後ろにずれてしまい、朝に起きられなくなることも考えられます。一方、オレンジ色のような赤っぽい蛍光灯の光は、体内時計にあまり影響しません。目安として、夕ご飯の時間から蛍光灯の色を変えるというのもおすすめです。白い光とオレンジの光を切り替えることができる照明器具も売られています。

寝室の環境を整える

寝室の環境は、睡眠に適しているでしょうか?湿度や温度を測定したことはありますか?湿度は、40〜60%が最適です。40%以下では乾燥しすぎで、のどや肌の乾燥が生じたり、ウイルスが活発化して風邪をひきやすくなったりします。60%を超えると、ダニやカビの発生が心配です。湿度を上げるには、加湿器を使うか、洗濯物の部屋干しも有効です。湿度を下げたいときは、除湿機やエアコンのドライ機能を使いましょう。部屋のドアや窓を開け、風が通るようにするのも効果的です。

夏は、26〜29度ほどで「寝苦しい」と感じないように調整しましょう。温度だけで調節せず、湿度も合わせて調節してみてください。湿度を下げることで涼しく感じ、寝苦しさを緩和できます。また、寝る前に布団を少し冷やしておくのもおすすめです。冬は、夏よりも低い温度で問題ありません。16〜19度ほどが目安です。湯たんぽや電気毛布を使用して、布団の中をあたためておくと寝入りがよくなります。湿度・温度をみながら、快適な環境になるよう調整しましょう。

休日だからと朝寝坊しすぎない

平日の疲れを、休日の「寝溜め」で解消している方も多いと思います。週末のたびに昼近くまで寝ている方も、少なくないかもしれませんね。ですが、起床時間・就寝時間はあまり大きく変化させない方がよいことがわかっています。長く寝るとしても1.2時間程度までとし、それでも疲れがある場合には昼寝をまじえて体力を回復させましょう。体内時計にとっては、昼近くまで眠るより、夜早く眠る方がよいこともわかっています。

まとめ

今回は、睡眠が健康寿命に与える影響について解説するとともに、質の高い睡眠を取るためのポイントをご紹介しました。睡眠が十分でないと、生活習慣病やうつ病を引き起こすリスクが高まります。心身の健康と睡眠は密接に関係していますので、長く健康で過ごすために、質のよい睡眠をとれるよう工夫しましょう。今回ご紹介したポイントを、日々の生活に取り入れてみてください。

参考

・岡部英男.健康寿命と睡眠について.予防医学第60号(2019:1) https://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/info_service/preventive_medicine/pdf/051-056.pdf ・厚生労働省e-ヘルスネット:睡眠と生活習慣病との深い関係 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html ・厚生労働省e-ヘルスネット:快眠と生活習慣 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html


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