生活習慣病予防に効果的な運動の種類と方法について
「運動といわれても、何をしたらいいのかわからない」とお困りの方はいませんか?
運動が体によいということはわかっていても、忙しい・体力に自信がないなどで一歩を踏み出せない方はとても多いです。
ここでは、生活習慣病の予防における運動の意味をお伝えするとともに、どのような運動が効果的なのか具体的にご紹介します。
運動の生活習慣病予防効果
「運動は体によい」とは聞いたことがあると思いますが、実際にはどのような効果があるのでしょうか?
運動はなぜ生活習慣病に効果的なのか?
運動の健康効果には、要因の1つとして、筋肉から分泌される「マイオカイン」というホルモンが関係しています。
マイオカイン(ミオカイン)は約30種類のホルモンの総称です。中でも、以下の4種類はとくに生活習慣病の予防に関わっています。
・IGF-1
筋肉や骨の発達を促す働きがあります。血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの効きを改善する作用も、生活習慣病予防に重要です。また、脳神経にもよい影響があり、認知症予防やうつ症状の緩和によいとされています。
・IL-6
脂肪を利用してエネルギーを作り出すように促す、肝臓で脂肪を分解させるなどの働きをします。動脈硬化の進行予防に関係します。
・FGF-21
肝臓に作用して、脂肪の分解を促す働きがあります。「線維芽細胞増殖因子-21」の略です。脂肪肝や、それが進行して生じる肝硬変などを予防する作用が期待されます。
・アディポネクチン
脂肪を燃焼させて肥満を防ぐ、血管の修復を促して動脈硬化を予防する、血管を広げ血圧を下げるなどの働きをします。
脂肪細胞や肝臓からも分泌されますが、最近になって筋肉からも分泌されることがわかりました。
体を動かすことで種々のマイオカインが分泌され、健康にとってプラスの効果が発揮されます。体をよい状態に整えておくために、日々の生活に運動を取り入れ、体の機能の底上げを目指しましょう。
生活習慣病を防ぐ運動習慣をチェック
定期的に運動をすることが、生活習慣病の予防に効果的だとお伝えしました。では、実際にはどの程度の人が運動をできているのでしょうか。
厚生労働省の調査によると、生活習慣病を発症する世代である30歳代〜50歳代ではとくに低く、男性では約20%、女性では約10%だけだということがわかっています。子育てや仕事がひと段落する60歳代、70歳代では運動している方の割合が増え、男性で約40%、女性で約30%でした。
ご自身の生活の中で、今現在どの程度動けているかチェックしてみましょう。
生活の中で、60分以上歩いたり動いたりしているか?
運動習慣はあるか?
同世代の同性と比べて歩くスピードは速いか?
すべて「Yes」の方はたいへん素晴らしいです。今の調子で、体を動かす習慣を続けてください。
「Yes」が1つ・2つの方は、今の生活にプラス10分の運動を加えてみましょう。 「Yes」が1つもないという方は、このままだと将来的に健康を損なってしまうかもしれません。今の生活にプラス10分、どこかで体を動かすことができないか、考えてみましょう。
生活習慣病を予防できる運動の種類と方法
ここでは、ジムに通ったり道具を買ったりしなくても、隙間時間で取り組める運動について紹介していきます。
仕事や家事、育児などで忙しい30歳代〜50歳代の方は、ほんの少しずつでも日常で運動に取り組むことが大切です。生活習慣病は40歳代から増えてきますので、予防のためには30歳代から意識できるとよいでしょう。
生活習慣病予防の運動は2種類を組み合わせて
生活習慣病の予防のために必要な運動は、大きく分けて2種類あります。
・筋肉トレーニング
マイオカインを分泌させるための運動が筋肉トレーニングです。筋肉の量が多いほど、下半身などの大きな筋肉を動かすほど、マイオカインはしっかりと分泌されます。
筋肉トレーニングで筋肉量を増やしましょう。
・有酸素運動
有酸素運動をおこなうことで、筋肉の中に毛細血管を増やすことができます。
筋肉は、毛細血管を通じて酸素や栄養素を取り入れ、エネルギーを作り出す工場のようなものです。毛細血管が増えれば効率的に酸素や栄養素を取り入れることができ、持久力のアップに繋がります。
筋肉トレーニングと有酸素運動は、それぞれ目的が違います。2つを組み合わせておこなうことで、それぞれの運動効果がより高くなりますので、少しずつ取り組んでみましょう。
筋肉トレーニング
筋肉トレーニングで、筋肉量を維持しましょう。筋肉量が減るとますます運動が億劫になる、疲れやすくなる、マイオカインの分泌が少なくなるなど、悪循環に陥ってしまいます。
目標は「ムキムキになる」ことではなく、体力と健康の維持です。ジムでウエイトトレーニングをしたり、プロテインを飲んだりといったことまでおこなう必要はありません。
筋力に自信がなくても、ご自宅で取り組める筋肉トレーニングをご紹介します。1日2種目、週3〜5回取り組んでみましょう。
<①スクワット>
足を肩幅に広げて立ちます。スクワットに自信がない方は、イスの背もたれを支えとして軽く掴みます。
息を吐きながら、ゆっくりと膝の高さまで腰を落とします。このとき、膝がつま先よりも前に出てしまわないよう、意識してください。お尻をうしろへ突き出すイメージです。
ゆっくりと元の姿勢に戻ります。 【はじめは10回、慣れてきたら20〜30回繰り返す】
<②薪割りスクワット>
少し上級者向けのスクワットです。
足を肩幅に広げて立ち、腕を前に伸ばして組みます。
息を吐きながら、ゆっくりと膝の高さまで腰を落とし、姿勢をキープします。
姿勢をキープしたまま、組んだ腕をゆっくりと5〜10回上げ下げします。薪を割るような動きです。
【はじめは5回、慣れてきたら10〜15回繰り返す】
<③クッション背中おこし>
腹筋運動を、軽い負荷でおこなえるよう工夫したトレーニングです。腹筋運動が苦なくできる方は、通常の腹筋運動で問題ありません。
床に仰向けになり、肩から背中にかけての部分に枕やクッションを入れます。
両足は肩幅程度に開いて膝を立て、腕は胸の位置でクロスさせます。
息を吐きながら、ゆっくりと背中を起こします。起こせる位置まででかまいません。
ゆっくりと元の姿勢に戻ります。勢いで戻らないことが大切です。
【はじめは5回、慣れてきたら10〜20回繰り返す】
慣れてきたら、クッションを外して挑戦しましょう。
有酸素運動
有酸素運動は、体脂肪の燃焼に効果的な運動です。「1日30分を毎日」「1日60分を週に3回」など、1週間の中で3時間前後が目標になります。
1日の中で、1回あたり30分体を動かすのが難しければ、10分間の運動を3回などに分けても問題ありません。同じ効果が得られます。
具体的な運動種目としては、以下のようなものがおすすめです。
<①ウォーキング>
普段の生活で最も取り入れやすいのがウォーキングです。時間をとってウォーキングをしてもよいですし、生活の中で歩く距離を少し伸ばすだけでも効果があります。日々の生活が忙しい方に、1番おすすめの運動です。
帰りは1駅分だけ歩く、エレベーターではなく階段を使う、ランチを食べに少し遠くのお店まで歩いていくなど、ちょっとの工夫を積み重ねることに意味があります。
1日に8,000歩を目標にしましょう。スマートウォッチやスマートフォンで簡単に歩数をカウントできます。お持ちでない場合は、2000円前後で歩数計を購入することをおすすめします。実際の頑張りが数値として目に見えることで、やる気アップに繋がるためです。
デスクワークが中心の方は、1日8,000歩が難しいかもしれません。そのような場合は、1週間の中で帳尻を合わせてみましょう。平日が6000歩なら、土日に10,000歩以上を目標にします。
「寝だめはできない」と聞いたことがある方もいるかもしれませんが、ウォーキングは「歩きだめ」ができるとわかっています。日々の記録を見ながら、帳尻合わせをしてください。
また、ウォーキングの効果を高めるために、以下のような点も意識してみてください。運動強度を高めることができますよ。
一歩を大きく
腕を振って、リズミカルに歩く
少しだけ早歩き
じんわり汗がにじみ、息が少し上がるペースを目標に
<②ジョギング>
体力に自信のある方や体を動かすのが好きな方は、ジョギングもおすすめです。
とはいっても、マラソンのように本格的なランニングをする必要はありません。走りながら少し会話する余裕があるくらいの「スロージョギング」で十分です。
脂肪を燃焼させ、内臓脂肪を減らすことで、動脈硬化の進行を予防する効果が得られます。ジョギングも、ウォーキングと同様に「細切れ」でも問題ありません。出勤前に15分、帰宅してから15分という具合に、できる時間を見つけておこないましょう。
ジョギングであれば、運動の効果が高いので、週に150分が目安です。1回30分を5回に分けても、1回20分を毎日おこなっても同じ効果が得られます。
まとめ
今回は、生活習慣病予防に運動がどのような効果をもたらすのか、また、運動として何をどのくらいおこなえばよいのかをご紹介しました。
忙しい毎日の中、ほんの少しずつからでも運動を積み重ねることで、生活習慣病の予防につながります。「週に3回もできないから、やらなくていいや」ではなく、まずは週に1回だけでも取り組んでみませんか?
健幸アンバサダー養成講座 オンライン講座のご案内
厚生労働省「健康寿命をのばそう!アワード」で優良賞を受賞したプログラムです。健康でい続けるためには正しい健康情報が不可欠です。いつでも、どこでも、、受講可能なオンライン講座を是非お試しください。詳しくはこちらから。
参考
・成人を対象にした運動プログラム
・厚生労働省. 運動施策の推進
・厚生労働省. 令和元年. 国民健康・栄養調査
・久野譜也 著. 100歳まで動ける体になる「筋リハ」 https://x.gd/uM3Hb
留言