生活習慣病予防に役立つ血糖値管理とその方法について
「糖尿病予備軍です」「血糖値が少し高いです」のように、血糖値について指摘されたという方は多いのではないでしょうか。高血糖は、メタボリックシンドロームの診断基準の1つであり、生活習慣病を引き起こす原因でもあります。
少しの心がけで、血糖値の上昇を抑えることができるとご存じですか?ここでは、高血糖が生活習慣病にどのような悪影響を及ぼすのか解説するとともに、血糖値を良好に保つためのポイントをお伝えします。
高血糖はどんな影響がある?
血糖値が高い状態だと、生活習慣病の発症にどのような影響があるのでしょうか。代表的なものをご紹介します。
血糖値の正常範囲は70〜110mg/dL
まずは、血糖値の正常範囲を知っておきましょう。空腹時血糖(食事から2時間以上経過したときの値)が70〜110mg/dLの範囲にあるのが目安です。メタボリックシンドロームの診断基準でも、空腹時血糖が110mg/dLが基準にされています。ただし、空腹時血糖が100mg/dLを超えると、「特定保健指導」の必要性があると判断されるため、70〜100mg/dLの範囲に抑えられるとよいでしょう。
空腹時血糖が110〜126mg/dLの場合は「境界型」といって、糖尿病予備軍のようなものという位置付けです。糖尿病の診断基準は空腹時血糖が126mg/dL以上と、もう少し高い値が設定されています。
ご自身の健康診断の結果などを確認してみてください。それでは、次からは実際に高血糖が生活習慣病とどのように関わっているか解説します。
血管が傷つき動脈硬化がすすむ
高血糖は、動脈硬化の原因の1つです。
血液中の糖分が増えると、「活性酸素」という物質が発生します。活性酸素は、「錆び」を作る物質です。活性酸素によって血管の内側を錆びてしまうと、血管がもろくなり、傷ができやすくなります。
また、活性酸素を減らすために「一酸化窒素」が使われますが、一酸化窒素は血管を広げたり、血管の炎症を抑えたりと血管を健康的に保つための物質です。一酸化窒素が活性酸素を減らすために使われてしまうと、血管をよい状態に保つことができません。さらに、糖分がタンパク質とくっついて生じる「AGEs(最終糖化産物)」も、血管を破壊する性質を持っています。
傷跡にカサブタができたときのことをイメージしてください。皮膚が固くなって柔軟性がなくなりますよね。同じようなことが、血管にも起きるのです。このようにして、高血糖が続くと血管が傷つき、「動脈硬化」がすすみます。動脈硬化がすすむと、血圧が上がって血管がさらに傷つき、腎臓病や心臓病、脳卒中などに繋がってしまいます。
糖尿病に進展する
もちろん、高血糖の状態を放っておくと糖尿病へと進展してしまいます。糖尿病になると薬を使った治療だけでなく、食事の制限なども必要になりますので、「少しでも糖尿病の発症を遅らせたい」という方が多いでしょう。
糖尿病は、血管の病気です。血糖値のコントロールがよくないと、どんどん血管を傷つけ、動脈硬化から腎臓病や心臓病に進展するだけでなく、視力が低下したり、手足の痺れが生じたりと全身にくまなく影響を及ぼします。
糖尿病は、透析になる原因の第1位、失明の原因の第2位でもあります。血糖値をしっかり管理して、健康に過ごしていきたいですね。
血糖値をコントロールするには?
血糖値が高い状態では、さまざまな理由で健康に悪影響があるとお伝えしてきました。では、実際に血糖値をよい状態でコントロールするために、ご自身の生活で何ができるのでしょうか?
食事の方法を見直す
血糖値といえば、食事の影響を受けるとお分かりの方も多いでしょう。ポイントは2つです。
①1日3食とる 「食事をとると血糖値が上がるのだから、回数を少なくした方がよいのでは?」とお思いになるかもしれませんが、血糖値を安定させるためには、1日3回の食事をすることが望ましいです。
食事を抜くと、次に食事をしたときに急激に血糖値が上がりやすくなってしまいます。血糖値の急激な変化は、体にとって悪影響です。急激に血糖値が上がり、そして急激に下がることを「血糖値スパイク」と呼びますが、血糖値スパイクは動脈硬化のリスクを高めます。
食事は3回に分け、血糖値スパイクをおさえて血糖値の波を小さくするようにしましょう。
②食べる順番を考える 食事のとき、野菜から食べる「べジファースト」を実践してみてください。食物繊維は、糖の吸収を穏やかにする働きがあるため、血糖値の急上昇を抑えることができます。また、野菜は比較的よく噛まなくては食べられないものなので、満腹感も得られやすく、食べすぎの防止にもなりますよ。
野菜のサラダや小鉢には、タンパク質を少しだけ加えるとより効果的です。シーチキンやお肉などを野菜と一緒に食べることで、消化・吸収がさらにゆっくりになります。血糖値を上げやすい炭水化物(お米、パン、麺)は最後がよいです。
食事のとき、まずはサラダや小鉢など野菜を1品食べるようにしましょう。
③血糖値をゆっくり上げる 「低GI食品を取り入れる」血糖値の上がりやすさを数値であらわしたものを「GI値」と呼びます。GI値の高い食品ほど、食べたあとの血糖値の上昇幅が大きく、GI値の低い食品ほど血糖値が上がりにくいです。GI値の高い食材は、糖尿病や心筋梗塞のリスクを高めること、また、メタボリックシンドロームや生活習慣病と関連のあることがわかっています。
GI値の低い「低GI食品」を取り入れることで、血糖値の上昇を穏やかにし、生活習慣病の予防に繋げましょう。目安として、GI値が60未満のものが望ましいです。
代表的な食品のGI値をご紹介します。
白米よりは玄米や雑穀米、うどんより蕎麦、白いパンよりは全粒粉パンという具合に、主食を変えてみてはいかがでしょうか。また、おやつを食べる場合にはチョコレートやとうもろこしではなく、蒸したさつまいもやバナナ、ナッツなどに変えてみると、血糖値の上昇は穏やかになります。
体重を適正に保つ
肥満は、それ自体が高血糖を引き起こす原因です。通常、内臓脂肪からは「アディポネクチン」というタンパク質が分泌されていて、インスリンがよく効くようにサポートしています。ところが、肥満によって脂肪細胞が大きくなると、アディポネクチンが十分に分泌できなくなり、インスリンの効きが低下します。すると、今までと同じ量のインスリンを分泌していても血糖値を下げ切ることができず、高血糖となるのです。
血糖値を下げるためのホルモンは、インスリンしかありません。インスリンがしっかり効く状態を保つために、体重を適正範囲におさえましょう。
体重を落とすには、運動が大切です。運動によって体重が落ちるだけでなく、血糖値が上がりにくくなる・インスリンの効きが改善するといった、血糖値のコントロールに対して総合的によい効果が得られます。
とはいえ、「本格的な運動は難しい」「なかなか時間がなくて…」という方も多いでしょう。血糖値の改善には、ウォーキングでも十分な効果が得られるとわかっています。
今よりも1,000歩多く歩くだけで糖尿病の発症リスクが6%減少し、2,000歩だと12%も減少するそうです。また、1日の合計が8,000歩以上であれば、心筋梗塞や脳卒中などで死亡するリスクが半分にまで低下することがわかりました。
少し肥満傾向のある方は、適正範囲になるようにウォーキングを取り入れてみませんか?
体重コントロールの方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
まとめ
ここでは、高血糖が生活習慣病とどのような関わりがあるかについて解説するとともに、血糖値管理の方法についてご紹介しました。高血糖は、動脈硬化をすすめ、高血圧や腎臓病などさまざまな病気の引き金になります。血糖値の急激な上がり下がり(血糖値スパイク)は動脈硬化の原因となりますので、血糖値の波が穏やかになるよう工夫しましょう。
食べる順番や食べ物の種類を意識するほか、今よりも多く歩くことが、血糖値管理のための第一歩です。今回ご紹介した方法を、いくつか取り入れてみてください。
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・厚生労働省 e-ヘルスネット:高血糖 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-025.html ・厚生労働省 e-ヘルスネット:インスリン抵抗性 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-012.html ・厚生労働省e-ヘルスネット:メタボリックシンドロームの診断基準 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html ・糖尿病ネットワーク:血糖値スパイクは「隠れ糖尿病」 https://dm-net.co.jp/calendar/2019/029184.php
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