幸福感が細胞を若返らせる? ポジティブ心理学と老化制御
- 健幸アンバサダー

- 8月4日
- 読了時間: 5分
幸福感と健康の関係は、科学で証明されている
「幸せな人は若く見える」と言われることがありますが、これは単なる印象ではなく、実際に科学的な裏付けがあることをご存じでしょうか?

ポジティブ心理学や生理学の研究では、幸福感の高さが心身の老化を遅らせ、健康寿命を延ばすというエビデンスが多数報告されています。たとえば、アメリカの心理学者バーバラ・フレドリクソン博士の研究によると、前向きな感情はストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、免疫力を高め、細胞の損傷を防ぐ働きがあるとされています(Fredrickson, 2001)。
さらに、幸福感は単に気分の問題ではなく、体の細胞レベルで「若さ」に影響を与えることがわかってきました。注目されているのが、細胞の老化に関与するテロメアという構造との関連です。
テロメアが若さのカギを握っている
テロメアとは、染色体の末端にあるキャップのような構造で、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなっていきます。これが限界に達すると、細胞は分裂を停止し、老化が進行します。このテロメアの長さが、実際の寿命や加齢速度と密接に関わっていることを明らかにしたのが、ノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士の研究です。
ブラックバーン博士らの研究チーム(Epel et al., 2009)は、日常的にストレスを感じている人ほどテロメアが短くなる一方で、ポジティブな感情や人との良好なつながりがテロメアを保護することを突き止めました。特に、「感謝」や「愛情」「目的意識」など、心が満たされる状態が、老化を抑える方向に働くというのです。
幸せな人の行動習慣に共通すること
幸福感は、生まれつきの気質で決まるわけではありません。実際には、日常の過ごし方や考え方によって、誰でも育むことができます。幸福度の高い人には、いくつかの共通点があることが、心理学の調査からも明らかになっています(Lyubomirsky et al., 2005)。

感謝を意識して表現している
他人との良好な関係を大切にしている
日々の中に目的や意味を見出している
小さな喜びを味わう感性を持っている
こうした行動が、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンやセロトニンといった“幸福ホルモン”を分泌させ、自然と笑顔や活力があふれる状態を作り出しているのです。
日常で実践できる幸福感を高める5つの習慣
以下にご紹介するのは、今日から誰でも始められる「幸福感アップ」のための実践法です。特別な準備やお金は必要ありません。
感謝を記録する「3つのありがとうノート」
毎晩寝る前に、その日に感謝したことを3つ書き出す。例:「家族がごはんを作ってくれた」「電車で席を譲られた」「天気が良かった」など。
「ありがとう」を声に出して伝える
心理学の研究では、「ありがとう」を言う側も聞く側も幸福感が高まるという結果が出ています。
1日15分、自然の中を歩く
公園や緑のある場所を歩くだけで、ストレスが軽減し、前向きな感情が高まりやすくなります。

ポジティブな言葉で独り言を言う
「私は私のペースでいい」「今日もよく頑張ったね」と自分に語りかけることで、脳にポジティブな自己イメージを刻みます。
他人のために行動する
小さな親切や、ちょっとしたお手伝いでも、脳の報酬系が活性化され、「自分は誰かの役に立てている」という感覚が幸福感を生み出します。
幸せを感じることは健康への近道
世界保健機関(WHO)は「健康とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態である」と定義しています。この定義が示すように、心が整ってこそ、本当の健康が実現されるという考えが、今や世界標準になりつつあります。
幸福感を高めることは、単なる心の贅沢ではありません。それは、細胞レベルで若さを保ち、病気のリスクを減らし、人生を前向きに生きるための力強い土台なのです。
あなた自身の“幸せを感じる力”を育てること。それは、他人のためでも、社会のためでもなく、自分の未来の健康と健やかさへの、何より大きなプレゼントかもしれません。
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出典・参考文献
• Fredrickson, B. L. (2001). The role of positive emotions in positive psychology. American Psychologist, 56(3), 218–226. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11315248/
• Epel, E. S., et al. (2009). Can meditation slow rate of cellular aging? Annals of the New York Academy of Sciences, 1172, 34–53.
• Algoe, S. B., Haidt, J., & Gable, S. L. (2008). Beyond reciprocity: Gratitude and relationships in everyday life. Emotion, 8(3), 425–429.
• Lyubomirsky, S., Sheldon, K. M., & Schkade, D. (2005). Pursuing happiness: The architecture of sustainable change. Review of General Psychology, 9(2), 111–131. https://greatergood.berkeley.edu/images/uploads/Pursuing_Happiness-_The_Architecture_of_Sustainable_Change.pdf
• WHO公式サイト「健康の定義」 https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/
• 厚生労働省 e-ヘルスネット「休養・こころの健康」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart

塚尾 晶子
株式会社つくばウエルネスリサーチ 取締役副社長/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターアドバイザー/保健師
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了 博士(スポーツウエルネス学)/ 専門領域はスポーツウエルネス学、保健学、人間環境学、公衆衛生学。
旭化成株式会社での産業保健活動、日本看護協会での健康政策の厚生労働省委託事業推進や保健師現任教育、法政大学での兼任講師等を経て、現職。地方自治体、企業等のSmartWellnessCity(健康都市政策)推進のコンサルティング、人材育成、国の調査研究事業等に従事し、国や地方自 治体や大学、企業と連携して健康づくり無関心層を減少させ健康格差を和らげる政策に取り組む。








