高血糖がメタボリックシンドロームに与える影響と対策
健康診断などで「糖尿病のケがある」と言われた経験のある方はいませんか?まだ糖尿病ではないから大丈夫だろうと思っていると、気が付かない間にメタボリックシンドロームを進行させてしまうかもしれません。 今回は、高血糖がメタボリックシンドロームに与える影響について解説するとともに、高血糖を改善するための対策をご紹介します。
高血糖は動脈硬化の大きなリスク
高血糖は、血管にダメージをあたえ、動脈硬化を進めてしまいます。そのメカニズムと、健康への影響についてみていきましょう。
高血糖が動脈硬化をすすめるメカニズム
「糖尿病」と診断される状態になっていなくても、高血糖や耐糖能異常と呼ばれる「糖尿病予備軍」の段階から、動脈硬化の進行が始まります。
血糖値の高い状態が続くと、「活性酸素」という物質が発生します。活性酸素は血管の内側(内膜)を傷つける原因物質です。傷ついた箇所にコレステロールが付着したり、傷を修復する過程で血管が血管が分厚くなったりすると、血管の柔軟性が低下していきます。
このように、血管が硬く・脆くなった状態が動脈硬化です。動脈硬化は血管の老化現象で、加齢とともに誰でも少しずつ進行し、完全に抑えることはできません。ですが、高血糖や高血圧などの危険因子があると、そのスピードは早くなってしまいます。危険因子を減らし、動脈硬化の進行をゆっくりにすることが大切です。
血管に生じた傷の内側にコレステロールが入り込むと、「プラーク」と呼ばれる膨らみができます。プラークによって血管が狭くなって血流が悪化したり、プラークが剥がれて血栓となって血管を塞いでしまったりすると、さらに健康への悪影響が、ドミノ倒しのように次々と生じます。この状態が「メタボリックドミノ」です。 メタボリックドミノを倒して健康を損なわないよう、日頃から気をつけていく必要があります。
動脈硬化による健康への悪影響とは
では、動脈硬化が進行するとどのような悪影響があるでしょうか?
動脈硬化を進行させる危険因子は、以下の4つです。 ・高血糖 ・脂質異常(高コレステロール) ・高血圧 ・肥満
この因子が1つも当てはまらない人と比較すると、3〜4つ当てはまる人では、脳卒中は約5倍、心筋梗塞は約8倍も発症しやすくなることがわかっています。中でも高血糖はとくに健康への影響が大きく、「糖尿病予備軍」の段階でも1.6倍、糖尿病だと3倍も虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)を発症するリスクが高くなるのです。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に関連した病気や状態の総称ですが、そのほとんどが「血管」にも関連した病気です。高血糖は、メタボリックシンドロームの診断基準の1つとなっています。
高血糖によって動脈硬化がすすめば、血圧も高くなります。血圧が高くなると動脈硬化がさらに進行し、悪循環が引き起こされます。糖尿病予備軍の方は、血糖値を下げる「インスリン」の効きが悪化し始めており、内臓脂肪の蓄積があると考えられるでしょう。 このように、さまざまな要因が絡み合って動脈硬化が進行していくと、メタボリックシンドロームとなり、最終的には腎臓の機能が衰えたり、脳梗塞や心筋梗塞を発症したりと、全身のあらゆる病気の原因となるのです。
高血糖の改善のために
高血糖は、動脈硬化を大きく進行させ、将来的な健康を損なってしまうとお伝えしてきました。高血糖を改善するために、日頃から気をつけるべきことを3つご紹介します。
食事はバランスの見直しを
食事は、バランスよくとることが大切です。
まずは、ご自身の年齢や体重に合ったエネルギー摂取量(カロリー)を超えないようにしましょう。揚げ物が好きな方、間食をよくする方などは、エネルギーをとりすぎているかもしれません。
そして、炭水化物の量を見直してみましょう。丼ものやうどんなど、一品料理を食べることが多い方は、炭水化物が多いといえます。炭水化物は食後の血糖値を上げやすいので、定食のようなスタイルでの食事が理想的です。 ただし、「炭水化物は1日1回だけ・全く食べない」のように、極端に減らす必要はありません。
また、1日3回の食事の中で、毎回必ず「食物繊維」をとるようにしてください。野菜や海藻、きのこなどがおすすめです。 お味噌汁にカット野菜や乾燥わかめなどを入れれば、手軽に食物繊維をとることができます。外食の場合も、ほうれん草のおひたしやキンピラなどの小鉢を取り入れてみてください。食物繊維から食べることで、血糖値の上昇が穏やかになることがわかっています。
アルコールは控えめに
意外かもしれませんが、アルコールも血糖値に悪影響です。
ビールや日本酒、ワイン、甘いサワーなどは「糖質」が含まれており、飲むと血糖値をあげてしまいます。また、アルコールは肝臓に貯めているグリコーゲンという物質をブドウ糖に分解させる働きがあるため、血糖値が上がります。
とくに日本人の場合、BMIが22以下の痩せた男性で、飲酒量が多いほど糖尿病のリスクが高いようです。
とはいえ、お酒は適度ならリラックス効果もあります。健康を害さずに楽しむため、お酒は1日1合程度までにとどめるようにしましょう。
運動で筋力アップと体重コントロール
運動は、血糖値のコントロールのために非常に効果的です。
運動をすることで、全身の筋肉から「マイオカイン」というさまざまなホルモンが分泌されます。
その中で、特に以下の2種類は血糖値を下げる働きがあり、糖尿病の予防に欠かせない物質です。 ・アディポネクチン 脂肪を分解して肥満を防いだり、体内の糖を使って血糖値を下げたりといった働きがある。血管の修復作用があり、動脈硬化の進行を抑える。 ・IL-6 インスリンの分泌を促し、血糖値を下げる。脂肪を分解して肥満を防ぐ。
こうしたマイオカインの効果を得るために、筋力トレーニングをおこないましょう。長時間、負荷をかけたトレーニングをする必要はありません。自宅でできる程度の運動でも、マイオカインはしっかり分泌されます。
<スクワット> 太ももやお尻にある大きな筋肉を鍛えるトレーニングです。 ・イスの背もたれをつかみ、まっすぐに立ちます。足は肩幅に広げます。 ・3秒かけてゆっくりと、腰を落とします。このとき、膝がつま先よりも前に出ないよう意識してください。 ・腰を落とした姿勢で1秒キープし、また3秒かけて元の姿勢に戻ります。 【10回繰り返す】 ※体力に自信のある方はイスの背もたれを掴まず、腕を胸の前で組んでおこないましょう。
<もも上げ> 腰からお腹にかけての筋肉を鍛えるトレーニングです。 ・足を軽くひらき、背筋を伸ばして立ちます。手は腰に当てます。 ・片足ずつ、3秒かけて太ももを上げます。太ももが床と平行になるくらいまで上げてみましょう。このとき、バランスがうまく取れない方は手を壁やイスの背もたれについてください。 ・ももを上げて1秒キープし、また3秒かけて元の姿勢に戻ります。 【左右10回ずつ繰り返す】
また、運動で体重を適正範囲にコントロールすることも、血糖値の改善のためには大切です。体重を減らすだけでも、インスリンの効きを改善できることがわかっています。
最も病気になりにくいとされるのは「BMI = 22」の値です。BMI = 25以上になると、糖尿病をはじめとした生活習慣病を発症するリスクが2倍以上になります。肥満傾向の方は、まずBMIを25まで下げ、その値を維持するようにしましょう。
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まとめ
今回は、糖尿病と診断されていなくても、「高血糖」というだけで健康への悪影響があることをお伝えするとともに、高血糖の改善方法についてご紹介しました。 高血糖は、メタボリックシンドロームの診断基準の1つで、動脈硬化を進行させる大きな要因です。動脈硬化の進行を抑え、大きな病気を発症しないよう、今回ご紹介した対策を日々の生活に取り入れてみてください。 ちょっとした意識の積み重ねが、健康の維持に繋がります。
参考
・久野譜也. 100歳まで動ける体になる「筋リハ」 ・日本動脈硬化学会.一般のみなさまへ健康な生活のために https://www.j-athero.org/jp/general/index/
・厚生労働省e-ヘルスネット:動脈硬化 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-082.html
・日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/
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