睡眠と腸内環境の知られざる関係とは?ぐっすり眠れる体づくり
- 健幸アンバサダー

- 11月10日
- 読了時間: 5分
寝つきが悪いのは、腸のせいかもしれない
「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚める」。そんな睡眠の悩みを抱えていませんか?加齢とともに睡眠の質が変化するのは自然なことですが、実は腸内環境の乱れがその背後に潜んでいるかもしれません。

腸は単なる消化器官ではなく、神経伝達物質やホルモンの合成に関わる重要な器官でもあります。特に、睡眠や精神状態に深く関わる「セロトニン」「メラトニン」というホルモンの生成に関係している点が注目されています。
この2つのホルモンの関係性を正しく理解することが、「眠れる体づくり」の第一歩です。
腸と睡眠をつなぐホルモンの仕組み
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分の安定や自律神経の調整に欠かせません。そしてこのセロトニンが、夜になると脳内で「メラトニン」に変化し、自然な眠気を誘います。ここで注意すべきは、「腸でつくられたセロトニン」がそのままメラトニンの材料になるわけではない、という点です。
腸のセロトニンと脳のセロトニンは別物
セロトニンの約90〜95%は腸で作られる(クロム親和性細胞によって)
しかしこれは主に腸内での働き(消化・ぜん動運動など)に使われる
脳の松果体で作られるメラトニンの材料となるのは、脳内で合成されたセロトニン
つまり、腸で作られたセロトニンはメラトニンの直接的な原料ではないのです。しかし、腸内環境が良好であれば、セロトニンの材料となるトリプトファンの吸収が促進されるため、間接的にメラトニンの生成に良い影響を与えると考えられています。

このように、「腸でのホルモン合成」が睡眠に与える影響は、直接的ではなく、間接的なルートによって起こるものです。
腸内環境の乱れが招く睡眠の質の低下
腸の状態が悪化すると、以下のような負の連鎖が起きます
トリプトファンの吸収低下 → 脳内セロトニン不足 → メラトニン減少
自律神経の切り替えが乱れ、入眠しにくくなる
腸の炎症が脳に伝わり、神経活動に影響する可能性
実際に、過敏性腸症候群(IBS)などの腸の不調を持つ人は、不眠症状を訴える割合が高いことが報告されています。
科学が注目する「腸活と睡眠の関係」
最近の研究では、腸内細菌の多様性やバランスが睡眠の質と関連していることが示されています。たとえば、善玉菌のエサとなるプレバイオティクスを摂取したグループでは、
深いノンレム睡眠が増えた
コルチゾール(ストレスホルモン)の上昇が抑えられた
といった改善効果が見られたという研究報告もあります。

また、東北大学による研究でも、乳酸菌摂取が睡眠の質の向上に役立つことが示唆されています。このように、腸活は「心地よい眠り」を得るための重要なアプローチとして注目されています。
今日からできる!眠れる腸を育てる5つの習慣
1. 夜ごはんは「寝る3時間前まで」に
寝る直前の食事は、腸に負担をかけ、睡眠の質を下げます。消化に良いものを、腹八分目で。
2. 発酵食品を夜に取り入れる
味噌、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品は腸内フローラを整え、トリプトファンの代謝をサポート。夜には温めた甘酒(米麹タイプ)もおすすめです。

3. ブルーライトを避ける
スマホやテレビからのブルーライトは、メラトニンの分泌を妨げます。眠る1時間前にはデジタルデトックスを。
4. お腹を温めて副交感神経を活性化
湯たんぽや腹巻きで腸を温めると、副交感神経が優位になり、眠気がスムーズに訪れます。冷え性の方には特に効果的。
5. 毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びる
朝日を浴びることでセロトニンが活性化され、夜のメラトニンの分泌がスムーズになります。起床時間の固定も、体内時計の安定に役立ちます。

腸が整えば、睡眠が変わる。眠りが変われば、人生が変わる
「眠れない」の原因が、心だけにあるとは限りません。腸という“体の土台”を見直すことが、深く心地よい眠りにつながることが、科学的にも明らかになってきています。
サプリメントや枕を変える前に、今日の夕食、今日の入浴、そして腸の声に耳を傾けてみてください。今夜から始める「腸活で眠る暮らし」は、あなたの毎日を少しずつ変えてくれるはずです。
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出典・参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌」
小川佳宏「腸内環境と睡眠の関係性に関する一考察」Jpn Complement Altern Med. 2023;18(1):1–7.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/18/1/18_1/_pdf
東北大学加齢医学研究所「乳酸菌摂取による睡眠の質向上効果についての研究」2021年https://www.idac.tohoku.ac.jp/research/news/20211005.html
Yano JM, Yu K, Donaldson GP, et al. Cell, 2015: “Indigenous bacteria from the gut microbiota regulate host serotonin biosynthesis.”
Gershon MD. The Second Brain. HarperCollins, 1998.
Thompson RS, et al. Prebiotic intake alters brain gene expression and sleep architecture. Front Behav Neurosci. 2017.

塚尾 晶子
株式会社つくばウエルネスリサーチ 取締役副社長/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターアドバイザー/保健師
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了 博士(スポーツウエルネス学)/ 専門領域はスポーツウエルネス学、保健学、人間環境学、公衆衛生学。
旭化成株式会社での産業保健活動、日本看護協会での健康政策の厚生労働省委託事業推進や保健師現任教育、法政大学での兼任講師等を経て、現職。地方自治体、企業等のSmartWellnessCity(健康都市政策)推進のコンサルティング、人材育成、国の調査研究事業等に従事し、国や地方自 治体や大学、企業と連携して健康づくり無関心層を減少させ健康格差を和らげる政策に取り組む。









